2015年9月12日土曜日

関東・東北豪雨の教訓 「特別警報で命を守る行動を」「洪水特別警報は出ない?」

 平成27年9月10日から11日にかけての「関東・東北豪雨」は、12日19時現在で、死者4人(宮城県2人、栃木県2人)、行方不明15人(茨城県)という大きな被害が出てしまいました。
 今後のために、今回の水害の教訓を考えてみたいと思います。

<写真:鬼怒川決壊>



 まず、関東・東北地方で初めて出された「特別警報」について、考えてみたいと思います。

 今回、栃木県、茨城県、宮城県の3県に出されたのは、「大雨特別警報」です。
 気象庁の基準は「数十年に1度程度の大雨」ということですが、概ね50年に1度が基準だそうです。

 特別警報が出た時間は、「栃木県」が10日午前0時20分、「茨城県」が10日午前7時45分、そして「宮城県」が11日午前3時25分でした。

 茨城県常総市で、鬼怒川の堤防が決壊したのは10日の午後0時50分ですから、特別警報が茨城県に出て5時間後たっています。
 遅いとは言えず「適切」だったのではないかと思います。

 ただし、気象庁の「特別警報」を受けて出すはずの、常総市の「避難指示」は鬼怒川の上流には出ていましたが、決壊した地区には出ていなかったそうです。

 この辺が1つの教訓になりそうですが、でも区市町村の首長や担当者を含め、国民の多くが「特別警報」の意味をあまり認識できてなかったのではないでしょうか。(私もそうでした。)

 また、鬼怒川の決壊した部分には「水位計」がなく、河川の様子の把握を、常総市が把握するのは難しかったと思われます。(上流の地区には、「避難指示」が出ていました。)

 もっと言えば、仮に「避難指示」や「避難勧告」が出ても強制力はないので、全員が一律に避難所へ向かうのではなく、夜中や水位の高い水の中を避難するより、建物の中の上の階へ避難する方が安全な場合もあります。(今回も、建物の上に避難した人が助かった例が多くあります。)

 だとすれば、「避難指示」や「避難勧告」の出るか出ないかは、あくまで参考とする程度で、個人の判断が重要になってきます。
 そのためにも、「特別警報が出たら、ただちに命を守る行動をとってください。」という気象庁のメッセージをもっと普及させていくことが重要だと思います。

<特別警報ポスター>



 もう一つ気になるのが、「洪水特別警報」が出なかったことです。
 今回の最大の被害が、河川のはん濫や決壊であったことを考えると、「大雨」に加え「洪水」の特別警報も出してほしかったと思いませんか?

 なぜ、「大雨特別警報」しか出なかったかというと、実は「洪水特別警報」というのは気象庁の規定にないのです。
 通常の警報には「大雨警報」も「洪水警報」もあるのに、なぜ、「洪水特別警報」はないのでしょうか。

 「特別警報」の種類について、気象庁のホームページ等で紹介します。

 気象等に関する特別警報は、「大雨」、「暴風」、「高潮」、「波浪」、「暴風雪」、「大雪」の6種類で、いずれの基準も「数十年に一度(概ね50年に一度)」となっています。
 例えば、東京都千代田区の50年に1度の大雨の基準は、3時間で170mm、48時間(2日)で407mmです。

 気象庁が、他に「特別警報」と位置付けているものとして、(1)津波の「大津波警報」、(2)居住地区に出された火山の「噴火警報」(レベル4および5)、(3)地震の「緊急地震速報で最大震度6弱以上を予想して発表するもの」、の3つがあります。

 やっぱり、「洪水の特別警報」はありませんね。
 なぜでしょう?

 実は、前回紹介したように、河川の水位やはん濫については、「指定河川洪水予報」という情報を、気象庁と、国土交通省または都道府県が共同で発表していて、特定河川について「○○川はん濫発生情報」や「○○川はん濫危険情報」という情報を出しています。
 今回の鬼怒川などにも、出されました。

 ところが「河川洪水予報」は、特定の河川に限定され、しかもその判断基準となる「水位観測所」の数も限られていて、今回の鬼怒川の決壊地点のように「水位観測」のブラインド地点も多くありますし、そもそも「水位観測所」がない河川も多くあります。
 また、気象庁の「特別警報」ほど、マスコミでも報道されません。

 今回の豪雨の原因となった「アウターバンド(線状降水帯)」による大雨洪水被害は、平成23(2011)年台風12号で、紀伊半島で死者・行方不明者98人を出したことでもわかるように、次第に増えています。

 このような状況を踏まえ、特定の河川だけではなく、地域全体の「洪水」の危険性を知らせる「洪水特別警報」を、ぜひ追加していただきたいものです。

<写真 ヘリコプターによる救出(茨城県常総市)>




 最後は、この大水害の中であった「いい話」を紹介します。

 今回、ニュースでも多く紹介されたように、「鬼怒川洪水」では、自衛隊、海上保安庁、消防、警察などの各機関から2日間で、のべ38機が出動して、1500人の孤立した人たちを救助しました。
 すごい数字だと思いませんか。
 
 実は違う機関のヘリが同じ地域で一緒に飛ぶのは調整が難しく、2011年3月の東日本大震災では、同一の場所を違う機関の複数のヘリが捜査するなど、空からの救助や捜索が、思うようにはかどりませんでした。

 その反省から「JAXA(宇宙航空研究開発機構)」が、災害時に様々な機関のヘリコプターの空の交通整理を一元的に行う「D-NET」という仕組みを構築しました。

 今回の災害では、「命を救う空のネットワーク」とも言える、この仕組みが多くのヘリコプターのスムーズな救助活動を、影で支えているそうです。

 もちろん、個々の建物のヘリコプターによる災害救助の順番は、病人・子供・老人などの「災害時要援護者」を最優先に、女性、一般男性、建物の社員など、平然と順番を守って行われています。
 間違っても、船長(社長や従業員)が先に逃げたりは、していないそうです。

 やっぱり、日本人はすばらしいですね。
 災害に負けずに、「がんばろう 日本!」


 
 

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