2015年10月4日日曜日

星になった盲導犬「ヴァルデス」~誕生日にご主人と交通事故死~

 2015年10月3日、1頭の盲導犬が10歳の誕生日を向かえました。
 盲導犬の名は「ヴァルデス」、優しく主人に忠実なラブラドール・レトリバーのオスでした。
 今回は、盲導犬「ヴァルデス」の話をします。

 ヴァルディスのご主人は、視覚障害者(全盲)でマッサージ師の山橋衛二さん(50歳)で、20代の頃、交通事故で視力を失ってしまいました。
 ヴァルディスが山橋さんのところにきたのは、9年前で、それから1人と1匹は、いつも一緒に行動していました。

 目が見えなくても、山橋さんはいつも明るさを忘れないで、ヴァルデスと一緒に小学校や高校を訪問し、「視かく障がい者と盲導犬~グッドボーイ・ヴァルデス」や「やさしさの輪を広げよう」などの演題で講演をしたり、盲導犬の啓発活動に参加したりしていました。

 今年の9月17日には、徳島県庁であった「秋の全国交通安全運動オープニングセレモニー」にも出席して、模擬横断歩道を渡る様子をヴァルデスと実演して、「障害者に優しい運転をしてください。」と訴えました。

<盲導犬「ヴァルデス」と山橋衛二さん>

 


 そして、運命の10月3日、ヴァルデスは10歳の誕生日を向かえます。
 この日の朝、いつものようにご主人の山橋さんとヴァルデスは、徳島県徳島市新浜町の市道を歩いて、山橋さんの職場に向かっていました。

 朝、8時過ぎ、山橋さんとヴァルデスが砂利置き場の前を通り過ぎようとした時、トラックが急にバックしてきました。
 山橋さんがトラックに轢かれて死亡、山橋さんを守ろうとした盲導犬のヴァルデスも巻き込まれて死亡しました。

 ヴァルデスだけなら逃げられたかも知れませんが、「盲導犬は命に代えてもご主人を守る」という使命を全うした結果のヴァルデスの死でした。

 若い頃、交通事故で失明した山橋さんとヴァルデスが、「秋の交通安全運動」を呼びかけていたのに、交通事故で亡くなるとは、何とも悲しい事故ですね。
 

 盲導犬の歴史を紹介すると、1819年(日本では江戸時代末期)に、ヨハン・ヴィルヘルム・クラインというウィーンの神父が、犬の首輪に細長い棒をつけ「盲導犬」として正式に訓練したのが最初だと言われています。

 日本では、第2次世界大戦が始まった1939(昭和14)年に、浅田氏など四人の実業家が1頭ずつ、盲導犬としての訓練を受けた犬をドイツから輸入して、陸軍に献納したのが最初です。
 4頭は、「戦盲軍人」が使用したと言われています。

  国産の盲導犬が誕生したのは、戦後の1957(昭和32)年で、アイメイト協会創設者の塩屋賢一さんが、18歳で失明した盲学校教諭の河相洌より依頼され、チャンピイという犬を訓練して国産第1号の盲導犬が誕生しました。

 平成27年9月1日現在で、日本にはわずか984頭しか盲導犬がいませんが、そのうちの1頭が10月3日に亡くなったことになります。
 ちなみに、徳島県にはヴァルデスを入れても4頭しかいないそうです。

 本当に偶然ですが、私の徳島に住む友人が、事故が起きる前日の10月2日の夕方に、道を歩いているヴァルデスと山橋さんを見かけたそうです。
 ご主人を守るように、ヴァルデスが静かに歩いてそうです。
 ヴァルデスは高齢のため、10月11日に盲導犬を引退することになっていたそうですので、本当に悲惨な事故でした。


<写真 山橋さんと歩く盲導犬ヴァルデス>
 
 


 最後に、プロの盲導犬「ヴァルデス」を追悼する「レクイエム」を作ります。


<レクイエム(鎮魂歌)>
「☆ 星になった盲導犬 ヴァルデス」


ワンワンワンとも  吠えないで
キャンキャンとも 鳴かないで
ただただ静かに ご主人に寄り添う

君は ヴァルデス 盲導犬
君は ヴァルデス 沈黙犬

 トラックが迫ってきても  逃げないで
命の危機にも 動じないで
ひたすら 誠実  ご主人を守る

君は ヴァルデス 盲導犬
君は ヴァルデス 誠実犬

ずっとずっと  影の存在
ずっとずっと ボディガード
ただただ 優しく ご主人の友だち

君は ヴァルデス 盲導犬
君は ヴァルデス 親友犬

9年間も寄り添った  ご主人
最後もかばって 星になった
10歳のバ-スデーに さようなら

君は ヴァルデス 盲導犬
君は ヴァルデス 世界一


 

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