2016年3月20日日曜日

春の彼岸に食べるのは「おはぎ?、ぼたもち?」~春分の日とお彼岸~

 今年は3月20日が「春分の日」で、この前後3日ずつを含む3月17日(木)から23日(水)までの1週間が、「彼岸(ひがん)」です。
 今回は、「春のお彼岸」の話をしたいと思います。

 「春分(しゅんぶん)の日」は、1878(明治11)年の太政官布告第23号の「年中祭日祝日ノ休暇日ヲ定ム」で、「春季皇霊祭」と定められた休日でした。
 これが、戦後、1948(昭和23)年の「国民の祝日に関する法律」で、国民の祝日「春分の日」になりました。


 「春分の日」は、二十四節気の一つで、昼と夜の長さが同じになる日ですが、本当は昼が少し長いそうです。

 「春分の日」の正式決定は、前年の2月に「国立天文台」が作成する『暦象年表』に基づき、閣議においてなされます。
 決定する日の前年2月の官報で、「暦要項」として公告されます。

 ところで、「春分の日」と「秋分の日」は、どちらも「国民の祝日」ですが、実は法律に定められている趣旨は、だいぶ違います。

 9月の「秋分の日」は「祖先をうやまい、なくなった人々をしのぶ。」であるのに対し、3月の「春分の日」は「自然をたたえ、生物をいつくしむ」という趣旨です。

 もちろん、日本では、「春分の日」と「秋分の日」のどちらも、前後3日をあわせた1週間を「彼岸」、または丁寧に「お彼岸」と呼んで、先祖のお墓参りに行ったり、各寺院で「彼岸会(ひがんえ)」などが行われています。
 「交通安全週間」などのいわゆる「・・週間」の走りが、「お彼岸」ということですね。

<写真 ネコのお墓参り>




 彼岸は、日本だけの習慣ですが、イラン暦では、春分の日が「元旦」になるそうです。

 日本で初めて、「彼岸会」が行われたのは、今から1200年以上前、平安時代初期の806(大同元)年に、大阪の「四天王寺」だったと「日本後記」(840年完成)に書かれています。

 江戸時代になると、お彼岸の行事は一般に定着しました。
 「彼岸(ひがん)」の語源には、2つの説があります。

    一つは、古代インドの「サンスクリット語からきた仏教の言葉」という説です。
 サンスクリット語の「パーラム(param)」が、仏教用語で「彼岸に至る」意味の「波羅蜜」になり、「彼岸」になったという説です。
   私たちが生きているこの世「此岸」は、人間の煩悩に迷い苦しむ所なのに対して、死者のいる世界は、煩悩を断ち切って、悟りを得た浬磐の境地=「彼岸」になると言われています。

 もう一つの説は、日本の太陽信仰から来た「日願」が語源という説です。
 春分の日・秋分の日には、太陽が「真東から出て真西に沈む」とともに、昼と夜の長さが同じになります。

 「太陽への願い」を意味する「日願」は、お日さま、太陽に対する農民の信仰を意味していで、「日天願」と呼ぶ地方もあるそうです。
 この日願が「彼岸」となったという説です。


   彼岸は、ちょうど太陽が真西に沈むため、「彼岸会」に夕日を拝む風習が、京都府や兵庫県をはじめ全国各地で定着しました。
 ちなみに、春分の日と秋分の日に、沈む太陽が示す極楽浄土への道を「白道(びゃくどう)」と言います。
 

<写真 ぼたもち>



  さて、ここからスイーツファンにとって、もっとも重要な話、お彼岸に食べる「ぼたもち」と「おはぎ」の話をします。(煩悩だらけですね。ダイエットは?)

 では、突然ですがクイズです。
 「ぼたもち」と「おはぎ」の違いは、何でしょうか?

 実は、材料や作り方は、同じものなんです。

 春の彼岸、つまり「牡丹(ぼたん)」の花が咲く頃に作るのが「ぼたん餅」、つまり「ぼたもち」です。
 一方、秋の彼岸、「萩(はぎ)」の花が咲く頃に作るのが、「はぎ餅」、つまり「おはぎ」なんです。
 それぞれの花の大きさに似せて、「ぼた餅」が「おはぎ」より大きいとも言われています。

 もう一つ、違いがあるとしたら、「ぼたもち」のあんは「こしあん」が多く、「おはぎ」のあんは「つぶあん」が多いことです。

 これは、あんこの原料の「小豆(あずき)」が、秋に収穫されることが関係しています。
 「おはぎ」を作る秋は、採れ立ての新鮮なあんこが使用できるので、「つぶあん」を使います。
 一方、「ぼたもち」を作る春、つまり今は、あずきの皮が硬くなっているので、すり潰した「こしあん」を使うそうです。


 こんな話をしていると、「ぼたもち」が食べたくなってきました。
 よし、こしあんの「ぼたもち」を買ってこよう。
 と、ブログを途中で中断して、近くのスーパーへ行きました。

 そこで、衝撃の事実を発見しました。
 なんと、近くのスーパーマーケットでは、3月なのに、堂々と「おはぎ」と「ぼたもち」、両方の名前で売られていました。

「結局、おはぎとぼたもちの違いは普及していないのか。」
 ちょっと悲しくなりましたが、店員に「ブログを読め」とも言えず、せめて、自分だけは意地でも守るぞと思いつつ、「こしあんのぼたもち」を買って来ました。

 よし、食べるぞ!

 そうそう、もちろん「ぽたもち」を食べる際には、「自然をたたえ、生物をいつくしむ」気持ちをもって、「祖先をうやまい、なくなった人々をしのび」ながら、少しだけ煩悩を許して食べましょう。
 いただきます!

 お墓を個人や家で持つことも「少子高齢化」の影響で、減っています。
 いつか、お彼岸の墓参りもなくなるのかと思うと、寂しいですね。


 最後に、「ぼた餅」じゃなくて、「牡丹(ぼたん)」の花言葉を紹介します。
 日本語で、「牡丹」の花言葉は、「風格」、「富貴」、「恥じらい」、「人見知り」
です。
  英語で言うと、「bashfulness(恥じらい、はにかみ)」、「compassion(思いやり)」です。


<写真:牡丹(ぼたん)>






<一句>
 雲さえも ぼた餅みたいな 彼岸(ひがん)空 

 
*俳句で「彼岸」は春の季語です。

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